はじめに
前回の記事で、
「次の回では、似ているようでちがう、ジェダイの掟と仏教の教えを考察しながら、自分の心の整え方について、未熟な私なりに考えていけたらなと思います。」と書きました。
書き始めたら、思いのほか広がってしまいました。
なので今回は前編として、少し個人的な話をさせてください。
ジェダイの掟と、お釈迦様(仏陀)の教え。
一見似ているようで、根本的なところが違うと感じています。
そしてその違いが、私自身の「心の整え方」のヒントになっています。
今回は宗教的な話ではなく、心理学的な視点からお話しするため、本記事では仏陀という表記で統一します。
ジェダイと仏教、何が違うのか
ジェダイの掟は「負の感情に支配されてはならない」という考え方でした。
しかし実際には、怒りや執着といった感情そのものを否定・抑圧するような指導に傾いていました。
そのため、感情との健全な向き合い方を学びにくい構図があったと感じています。
恐れも、怒りも、悲しみも。
感情そのものが、ダークサイドへの入口とされていたのです。
でも、心理学や脳科学の視点から見ると、それがいかに危ういことだったか、過去の記事で書いてきました。
では、仏教はどうでしょうか
ここで一つお断りをさせてください。
日本に伝わっている仏教の多くは「大乗仏教」といって、宗教的な色合いが強くなっています。
(仏陀は死後の世界について答えなかったと言われています。)
今回お話しするのは、仏陀が直接説いたとされる「初期仏教」の教えです。
仏陀の教えを学んで、私が最初に驚いたのは、
「苦しみは、あって当然のものだ」
という出発点でした。
感情を消そうとするのではなく、まず「ある」と認めること。
ジェダイとは、真逆の出発点です。
仏陀の教えとメタ認知
仏陀の教えは、私には宗教というより、合理的な「心の取り扱い説明書」のように感じています。
私なりに簡単に整理すると、こんな流れになると思います。
5つのステップ
① 感情に気づく
まず、自分の中に感情が生まれていることに気づく。
② 感情を分類する
「これは不安だ」「これは怒りだ」と、名前をつける。
③ 感情を観察する
その感情を、否定も肯定もせずに、ただ眺める。
④ 呼吸や歩行で今に戻る
深呼吸、足裏を意識して歩く、足踏みをする。
⑤ 自然に執着が薄れる
無理に消そうとしなくても、気づいていると、少しずつ楽になっていく。
メタ認知とは何か
ここで大切なのが「メタ認知」という考え方です。
メタ認知とは、「自分の心の動きを、一歩引いた場所から眺めているもう一人の自分」の視点です。
「ネガティブな感情を抱いている自分」を、否定も肯定もせずにただ見つめること。
一つ注意したいのは、
「執着してはいけない」「早く立ち直らなければ」
と思うことは、メタ認知ではないということです。
これは「ジャッジ(評価)」であり、むしろ脳にストレスを与えてしまいます。
見つめるだけでいい。それだけでいいんです。
といいますが、見つめるだけと言うのが本当に難しいことだと思います。
ちなみに、感情に「名前をつける」だけで、脳の扁桃体の興奮が和らぐと言われています
仏陀の教えと脳科学が、2500年の時を超えてつながっているのが、私にはとても興味深いです。
(初期仏教と脳科学の関係は、こちらの記事でまとめています)
現実の私たちの話
スター・ウォーズの世界では、感情の抑圧はやがて他者への攻撃に変わっていきました。
でも現実では、抑え込んだ感情は、外ではなく内側に向かうことの方が多いように思います。
自分を責める。自分を追い込む。
そちらの方が、ずっとリアルな話ではないでしょうか。
日本人と感情表現
日本では、感情をそのまま表に出すことを、あまりよしとしない雰囲気があります。
それは、お葬式の場にも表れています。
大切な人を亡くしても、大声で泣くことをためらう。
そして49日を過ぎると、「いつまでも泣いていたら、成仏できなくなる」と言われることもあります。
悲しんでいいはずの場所でさえ、感情に蓋をすることを求められることもあります。
私自身も、そうでした。
早く立ち直らなければと思うあまり、心身のバランスを崩してしまったことがあります。
「感情を持ってはならない」というジェダイの掟は、フィクションの中だけの話ではないと、今は感じています。
心の整え方
今までの学びを通して、完璧にできているわけでは全くありませんが、少しずつ自分なりの整え方が見えてきました。
まず、気づくこと
感情が揺れていることに気づいたとき。
「またざわざわしてる」
それに気づくだけで、少し違います。
「早く落ち着かなければ」とジャッジするのではなく、ただ気づく。
今ここに戻る
そして、今ここに戻る。
深呼吸や、足裏を意識してその場で足踏みをしたり、歩行する。
脳に少し余白が生まれて、それだけで穏やかになれることがあります。
詳しくは、こちらの記事でまとめています。
完璧に整えようとしなくていい。
生きている限り、感情は揺れます。
気づいて、観察して、今ここに戻る。
この繰り返しを続けていきます。
シンプルそうに見えても続けていくことは本当に難しいと感じています
誰かに頼ることも必要
生きていると色々なことがあります。
自分一人で心を整えることが難しい時もあります。
そんなときは、誰かに頼っていいと思っています。
信頼できる人に、ただ話を聞いてもらう。
それだけで、心が軽くなることがあります。
フロイトはこれを「カタルシス」と呼びました。
言葉にして吐き出すことで、抑え込んでいた感情が解放されます。
「話すと楽になる」という、誰もが経験したことのある感覚です。
それでも難しいときは、専門家の力を借りることも、一つの選択肢だと思います。
頼ることは、恥ずかしいことではありません。
私は 困った時に助けてと言えることは、強さだと思っています
また、誰かがつらい気持ちを打ち明けてくれたとき。
すぐに励ましたり、アドバイスをするのではなく、まずその感情に耳を傾けられる私でありたいと、思っています。
おわりに
生きている限り、感情は揺れます。
気づいて、今ここに戻る。
その練習を繰り返すたびに、脳の中で少しずつ変化が起きると言われています
(脳の「司令塔」である前頭前野から、「警報器」である扁桃体への神経回路が、少しずつ太くなっていくからだと言われていますが、詳しくは、こちらの記事でまとめています。
繰り返し行うことで、ほんの少しづつ感情の波が穏やかになるのかもしれません。
とはいえ、簡単そうに書いていますが、継続がとても難しいと思います。
私も正直できていません。
でも、知識として知っているだけで、少し気づきやすくなる。
気づきが増えるだけで、少しずつ変わっていく。
私はそう信じてます。
仏陀も、心理学も、脳科学も、
みんな同じことを、違う言葉で伝えているのかもしれません。
次の後編では、少し視点を変えて、ジェダイという組織そのものについて考えてみたいと思います。
崇高な理想を持っていたはずのジェダイが、なぜシスより危険な側面を持っていたのか。
未熟な私なりに、書いてみます。
※本記事の内容は個人の体験および一般的な知見をもとに執筆しています。医療・心理的な判断については、専門家へのご相談をおすすめします。
参考文献・参考サイト
「こころを洗う技術」草薙龍瞬(著)
「これも修行のうち」草薙龍瞬(著)
私がこの記事を書けたのはこの本のおかげです。
仏陀は合理的なリアリストだったという視点が、目から鱗でした。
宗教的な部分をなくし、初期仏教をわかりやすく、実践的に解説してくれています。
(とはいえ、全部完璧に実践するのは私にはハードルが高かったですが、とても参考になりました。)気になる方はぜひ😊
「小説 スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」マシュー・ストーヴァー著 ジョージ・ルーカス原作
スター・ウォーズシリーズを深く楽しみたい方におすすめです。映画だけではわからなかったアナキン・パドメ・オビ=ワンの心境が丁寧に描かれています。なぜアナキンがダークサイドに堕ちたのか、なぜパドメは亡くなったのか。映画でモヤモヤしていた部分が腑に落ちました。
参考サイト:東邦大学理学部「ストレスと脳」
https://www.toho-u.ac.jp/sci/bio/column/029758.html