スター・ウォーズで学ぶフロイト心理学|アナキンの「抑圧」はなぜ起きたのか?

目次

はじめに

前回の記事 スター・ウォーズで学ぶユング心理学|ユングは「どう活かす」のか?
では、スター・ウォーズがユングの世界観に影響されていたこと
アナキンがシャドウに飲み込まれてしまったこと(ダークサイドに堕ちる)ということを書きました。
なぜ、アナキンはここまで、感情を、抑え込みその反動で闇(シャドウ)に飲み込まれてしまったのでしょうか?
今回はジークムント・フロイトの視点から紐解いていきます

(※この記事はエピソード1〜6のネタバレを含みます。また、独自の解釈も含まれます)

フロイトとは?


フロイトは心理学三大巨頭の一人で、心理学の父と呼ばれ、現代心理学の基礎となっています。
そのため、アドラーやユングより特徴が見えにくい側面があります。
フロイトの理論は、現代心理学だけでなく、映画、文学、日常会話の中にまで深く浸透しています。

​「トラウマ」
​「無意識」
​「コンプレックス」
​「欲求不満(フラストレーション)」
これらはすべてフロイトが広めた考え方です。

私たちは最初からこれらを知っているので、フロイトの解説を聞いても「それって普通じゃない?」と感じてしまい、個性が薄く見えるのかもしれません。
だから、もう一度しっかり勉強し直そうと思いました

フロイト心理学のポイント

​1. 心は「氷山」のようなもの(無意識の発見)

​フロイトは、人の心は海に浮かぶ氷山に似ていると考えました。
​意識: 水面の上に見えている部分。自分で自覚できている考え。 ​
無意識: 水面下の巨大な部分。普段は自分でも気づけない、本音や過去の記憶。
私はこの無意識を、「心の地下室」のようなものだと感じています。

2. 心の3つの構成要素


​フロイトは、心の中には3人のキャラクターがいると考えました。
​エス(本能): 「あれがしたい!食べたい!」という本能的な欲求。
​超自我(理性): 「それはダメ。正しくあるべきだ」というルールや道徳。
​自我(調整役): 本能とルールの板挟みになりながら、「じゃあ、こうしよう」と現実的な判断を下す自分自身。

3. 防衛機制(心を守る仕組み)


​嫌なことや不安があったとき、心が壊れないように自分を守る「心のクセ」のことです。
​例えば、嫌な記憶を忘れようとしたり(抑圧)、誰かのせいにしたり(投射)、別のことで発散したりすること。

これらは誰にでもある心の防衛反応だとフロイトは説きました。

この基本的なフロイトの考えに基づいて、アナキン スカイウォーカーについて私なりに紐解いていきたいと思います。
(なぜルークではなく、アナキンなのかは、前記事をご覧ください)

ジェダイの掟と感情の抑圧

アナキン・スカイウォーカー。
彼は「選ばれし者」として、あまりに強大な力(フォース)を持っていました。
幼いアナキンは母親と別れ、ジェダイの道に入りました。
しかし、そこでの教えは、彼にとって「心の地下室」(無意識)に爆弾を溜め込むような毎日の始まりだったのかもしれません。

1. ジェダイの掟という「超自我(スーパーエゴ)」

幼い頃に母と離れ離れになったアナキンにとって、「お母さんに会いたい」「誰かを愛したい」という純粋な欲求(エス)は、人間として当然の感情でした。

幼くして母と離れた彼にとって、年上の美しいパドメは、無意識のうちに「失った母の面影」を投影する対象でもありました。
彼にとってパドメを失うことは、二度とお母さんを失う悲劇を繰り返すことに等しかったのです。

しかしジェダイは、「執着は恐れに繋がる。感情を捨てろ」と、その愛を「悪い感情」として地下室に押し込めるよう命じました。

2. 「感情のフタ」がもたらした悲劇

心理学には「反動形成」という言葉があります。感情を無理に抑え込むほど、それは歪んだ形で爆発しやすくなります。

ジェダイが「恐れるな」と強制すればするほど、アナキンの中の「大切な人を失う恐怖」は、地下室の中で黒く、大きく育っていきました。

その結果、パドメへの愛は「慈しみ」ではなく、絶対に離さないという「執着(固着)」へと変わっていきました。

ジェダイの「組織の仕組み」の欠点


​賢者たちの集まりであるはずのジェダイ評議会は、アナキンのダークサイド転落を防ぐことができなかったのでしょうか?
組織としての「失敗」があったと考えます。

感情を「癒やす」のではなく「禁じた」こと


​フロイトの心理学では、過去の傷は「言葉にして、認め、癒やす(カタルシス)」ことで解消されます。
しかしジェダイの仕組みは、感情を「ないもの」として扱いました。悩みを相談しても、「執着を捨てなさい」という人間の心の仕組みに不可能な答えで返されるだけでした。

不完全な「父性」の押し付け


​特にアナキンにとって師匠であるオビ・ワンは、兄であり父のような存在でした。
しかし、オビ・ワン自身もまた「完璧なジェダイ」であろうとしすぎました。
アナキンが本当に欲しかったのは、「失敗しても、弱くても、お前は私の大切な弟子だ」という無条件の承認でした。
オビ・ワンの葛藤は特に小説で詳細に書かれています。
しかし、ジェダイの評価システムは「規律を守れるかどうか」という点に偏りすぎていて、オビ・ワンもこのジェダイの掟という「超自我(スーパーエゴ)」が抜け出せませんでした。(詳しくは別記事で語ります。)

パルパティーンという「逃げ道」を作ってしまった


ジェダイの掟によって、アナキンの心は限界に近かったと思います。
そこに、パドメが死ぬ予知夢。
その時にアナキンの「不安」はピークに達します。
弱り切ったアナキンに、パルパティーンはこう囁きます。

「暗黒面の力を使えば、死さえも克服できる」


パドメを救いたいという純粋な愛(イド)が、ジェダイの厳しすぎる掟(超自我)を突き破り、ダークサイドへと彼を走らせたのです。

組織としての犠牲者という側面

ここまで見ると、アナキンはダークサイドへ落ちた悪い人、もしくは人間として未熟者ではなく
ジェダイという組織の犠牲者だと言えます。

アナキンは、フォースや身体能力は特別ですが、心は良くも悪くも普通の人。
ダークサイドへ落ちてからの行動は肯定できませんが、
その理由は愛する家族を失いたくない、助けたいという、誰もが当たり前に持っている感情でした。
普通の人が、
組織のルールによって、悪へと転じてしまう。
スター・ウォーズは、その怖さを描いているように思えました。

現代社会の抑圧から心を守る

アナキンが特別ではないということを述べましたが
私たちも様々な社会の制約と、圧力の中で生きています。
ジェダイの掟ほど厳しくなくても
「社会人として〇〇しなければ」
「母親として〇〇しなければ」
というプレッシャーは誰でも受けていると思います。

つまり、アナキンのダークサイドへ落ちてしまったというこの背景は決して他人事ではないのです。

アナキンの場合、抑圧された感情は他者への攻撃(ダークサイド)へと向かいました。
でも、多くの日本人の場合、それは自分自身へと向かいやすいと言われています。

社会のルールを私たちに優しいものに変更できたらいいのですが、そう簡単にはできません。
私たちは自分の心を守る必要があると思います。

現代社会の抑圧とその具体策


難しいことですし、完璧な答えはないと思いますが
フロイトの考え方からヒントをもらいながら、私なりに3つの具体策を出してみました。

①「自覚」


​フロイトの考えでは、苦しみの原因は「何が起きているか分からない(無意識)」ことにあります。
客観視: 「私はダメだ」ではなく、「私は今、ダメだという感情を持っている」と切り離して見る。これが自覚の第一歩です。
​脳の仕組みからも:感情に名前をつけるだけで、脳の「前頭葉(脳の司令塔)」が動き出し、暴走しそうな「扁桃体(脳の警報機)」をなだめてくれます。(詳しくは扁桃体の過去記事をお読みください)

②「語る(カタルシス)」:心の毒を外に出す


​フロイトの弟子たちが確立した「談話療法」の根幹です。
​カタルシスの効果: 抑え込んできた感情を、信頼できる誰かに話したり、ノートやブログに書いたりすることで、心の緊張が解放されると言われています。

③現代社会で生き抜く「まいっか」の精神


​「完璧な自分」を諦める: 現代社会の「こうあるべき」という超自我(スーパーエゴ)に対して、「暗い気持ちになっても『まいっか』」と許可を出してあげること。

このようなことを意識して、自分の心を守っていきたいです😄

おわりに


今回はアナキンを、フロイトの視点から紐解きました。
では、ダークサイド転落をせず、光と闇を統合し新しいジェダイとなったルークと、アナキンは何が違ったのでしょうか?
次回もフロイト心理学を軸にしながらも、少し違った視点で書いていけたらと思います

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この記事を書いた人

ブログ「心音」の管理人、こはくです。
看護師・保健師・養護教諭の資格を持ち、介護・対人支援の現場に10年以上携わってきました。
自分自身もADHD傾向による生きづらさを感じてきた当事者です。
現場で出会ってきた方々の姿と、脳科学・心理学の学びを重ね合わせながら、自分とやさしく向き合うためのヒントを綴っています。グリーフケアや暮らしの工夫についても、実体験をもとに、自分のペースで発信中です。

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